大学の話

数ヶ月ぶりに大学に行く。
ニートフリーターと学生を混ぜて水で溶いたような生活もついに終わりの時が来たのだ。

僕は豆腐メンタルで有名なのだが、大学に向かう電車の中では決まって吐き気を催してしまう。そのせいか何時間大学にいても全く食欲が湧かない。
大学の知り合いに会いたくない。さっき乗り換える駅で元カノとすれ違ってしまった。ダメなタイプの別れ方をしてしまい今でも気まずい。サークルもここ半年ほど参加していないので気まずい。向こうはそうでもないのだろうが、僕は気まずい。
「気まずい相手」というのは僕の中で「敵」の部類に入る。憎んではいないが、手の内を見せてはいけない相手なのだ。表情を読ませないために大学に行くときは決まってマスクをしている。
前髪で目線を隠したりマフラーや襟で更に顔を隠したりする。足音を立てない。最後のは僕の普段からの癖でもある。

大学で多少は心を許している人もいる。片手で収まるほどだけど。
1人は隣の学科の同級生で、同じ授業も多かった。お互い「この大学、この学科はクソだ」という点で意見が一致している。僕と違うのは、入学の時点で大学生活に絶望しており、さっさと単位を取って大学院で巻き返すと決意していた所だ。そいつはもう授業に出る必要があまり無いので僕と同じ授業を受けることはもう無いかもしれない。
1人はさらに隣の学科の同級生で女の子だ。尻が軽いと噂だが(僕が見るところ事実だと思う)、いいヤツだ。こいつもこの大学が嫌いらしい。でも僕の大学生活復帰を一番喜んでくれた。
数えた限り最後の1人は、二つ上の女の先輩だ。正確に言うと先月に卒業したのでもう大学にはいない。可愛らしい見た目なのに言うことがキツい。でもそこが好きなところだ。最近この人の夢を頻繁に見る。辛いのでやめてほしい。

この大学に来て良かったことを考えよう。
一つ目、登り坂の歩き方を学んだ。駅から15分間登り通しの坂があるためだ。コツは、ふくらはぎの筋肉ではなく尻の筋肉を使うこと。こうして元々ぷりっとした僕の尻はさらにぷりぷりになり、刺身にすると美味そうな尻肉になった。
二つ目、クソ教師が生産される過程を知れた。僕は教育学部に所属している。つまり学部の全員が前提として教師になるつもりで大学に来ている。僕も入学したときはそうだった。数ヶ月後には「ああ、僕が嫌悪していたバカでクソな教師ってこういう風に生まれるんだ」と納得した。大学の時点で知れたので就職後に知るよりマシだろう。

たくさんの大学へのヘイトを溜め込んでいる僕は、それを糧にまた新しいヘイトを溜め込んでゆく。
全てを環境のせいにするのは良くない。でも、いくらかの原因は確実に環境にある。
もっと自分のやりたいことを極めることができる環境を求めて、僕は大学を変えることにした。生きがいみたいなものを探している。