潜る話

海に潜っているときは孤独になる。

外界の音はほとんど聞こえず、自分の呼吸音ばかりが頭に響く。

自分の身体の周りは水が覆っている。

隣にはバディやチームメイトがいるが、目元とジェスチャーでしか意思疎通できない。

 

だが、不思議と独りではない。

むしろ、限られた伝達手段しかない状況が連帯感を強くする。

そこには空気のあるところで言葉を交わすより強いコミュニケーションがある。

自分たちだけが異世界に取り残されたような気持ちになる。

そこには恐怖や怯えではなく、心地よい孤独感が漂う。